研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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48 回の論文は、GASP55という分子が細胞質内に多く存在すると通常ではない細胞内輸送系 (unconventional secretory pathway) を使って、小胞体に滞留している変異CFTRを細胞膜へと輸送してくれるということを見いだした。この論文での決定的なデータはCFマウスのサバイバルがGASP55の高発現マウスとの掛け合わせで劇的に改善するというデータ。薬でどうやってGASP55の発現を増やすかが今後の課題であるが,HTSでの化合物スクリーニングで見つかってくるかも。この論文の内容は、今年、アナハイムであるアメリカCF学会で発表されるだろう。楽しみである。 2011年9 月26日 (月) ERADを効率よく行なうために Mol.Cell 6月号からSho-chanのプレゼン。小胞体でタンパク質が異常構造をとるとプロテアソームという分解系に運ばれる。しかし、異常構造をしたものは凝集体を形成しがちだが、そうではなく可溶性を維持したまま分解されて行っている。この可溶性維持に関わる分子が存在するはずであるが、今回の論文で、その候補分子複合体が同定された。それがBag6複合体であり、ERAD基質の溶解性を維持し、プロテアソームまでの基質の輸送を仲介するシャペロンホルダーゼ (Chaperon holdase)として機能するという。この分子は、多くのERAD基質の分化に関与するE3リガーゼであるgp78と相互作用する分子をマススペクロメトリーで探索して発見された。このメカニズムがどのくらい多くの基質の分解に関与しているかが知りたいところである。 2011年9 月14日 (水) 体を守るプリオン様タンパク質 プリオンは感染性の病原性タンパク質として有名である。本日の朝ゼミでOka-chanにより紹介されたCell 8月号の論文は、ウイルス感染時に活性化されるタンパク質が細胞内においてプリオン様の構造変化を介して、抗ウイルス性の自然免疫機構を持続的に活性化するのではということを示したもの。プリオン様タンパク質が体を守るともいえる。この現象は、hsp90の阻害薬として知られるgeldanamycinによって抑制されるという。細胞内に構造変化を起こしたタンパク質を細胞内にマイクロインジェクションし、伝染性に自然免疫機構を活性化するというデータが必要に思うが、トライしてもうまくいかなかったのだろうか。今後は、このメカニズムが他のタンパク質でも起こりうるという知見が出てくれば、この発見の価値は飛躍的に上がるだろう。そのタンパク質を探索する方法としては、geldanamycinによって、抑制される生体反応を網羅的に調べていけばよいだけかも。 来週末は研究室旅行。今年は、別府、湯布院コース。4年生の芸が楽しみである。 2011年7 月29日 (金) 白色脂肪が褐色脂肪へ 今朝の朝ゼミはCell Metabolism 6月号から、Miki-chanが紹介した、大変面白い研究内容。 TGF-β/Smadシグナルが、通常、白色脂肪細胞の維持に関わっていること、そして、そのシグナル経路を抑制することを行なうと、白色脂肪細胞が褐色脂肪細胞としての性質を持つようになり、エネルギー代謝を活発にし、肥満や糖尿病が抑制できることを明らかにした。臨床的にも肥満や糖尿病患者の病態に応じて、血液中のTGF-β量が多いことも明らかにしている。 2011年7 月22日 (金) 免疫細胞の活性化と収束 Immunityの6月号から。M2 Matsu-shinの13回目のプレゼン。 T細胞は、抗原を感知すると活性化して、増殖したり、サイトカインなどを放出する。この活性化の際に、抗原提示細胞とT細胞の接着面には、お互いの細胞表面にある受容体や細胞内のシグナル伝達分子が同心円状に配置された「免疫シナプス」を形成するという。本研究グループは、以前に、T細胞受容体と下流のシグナル伝達分子からなる小さな集合体「マイクロクラスター」を発見している。この論文では、このマイクロクラスターが、微小管を足場とする分子モーターの機能を持つダイニンによって微小管を伝って運搬され、免疫シナプスの形成につながること、この移動によって免疫シナプスに集まったT細胞受容体が分解され、T細胞の活性化が収束することを明らかにしている。今までダイニンは、細胞分裂、神経細胞の

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