研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
54/68

50 2011年7 月12日 (火) パーキンソン病の神経変性メカ Cell 2011年3月号から。創薬生命3年のChosa君の初ゼミ。 パーキンソン病の代表的な原因タンパク質であるParkin(E3ユビキチンリガーゼ)の活性が低下すると、基質のひとつであるPARIS(転写抑制因子)の発現が増加し、PGC1α(神経保護作用)の遺伝子発現を抑制することでドーパミン神経の変性が起こること、そして、PGC1αを補うと神経の変性が抑制されていることが示された。この論文の面白いところは、検討した全てのパーキンソン病患者において、上記の分子の発現変化がきれいに観察されること、Parkinのノックアウトマウスは発生期に補完的なメカニズムが関与して、表現型は何も示さないが、成長した後にParkinをコンディショナルにノックアウトするとドーパミン神経の変性が見られるようになるということ。今まで、神経変性疾患の原因と考えられている分子についても、同様なコンディショナルノックアウトマウスを作成すると患者に近い表現型が得られる可能性が高い。事実、 GDNF (glial-cell-line-derived neurotrophic factor)のノックアウトも同様なことが報告されている。 治療的な観点からPGC1αの発現増加あるいは活性化をどうするかを考えていくとパーキンソン病の進行抑制に繋がるという。 初ゼミ Chosa君、よく奮闘しました。次回はさらに良いゼミを! 2011年6 月30日 (木) 免疫細胞の機能とカルシウム Immunity 5月号から。Ihorinのプレゼン。 抗原刺激等、様々な刺激に応答して、IP3が産生され、細胞内のカルシウム貯蔵部位である小胞体において、カルシウムイオンが放出されると、小胞体内のカルシウムイオンの減少を感知して、小胞体膜に存在するStim1&2分子が会合し、会合すると形質膜に存在するカルシウムチャネルと相互作用し、カルシウムイオンの流入を促進するという。その結果、カルシニューリンという脱リン酸化酵素が活性化され、制御性B細胞においては、転写因子NFATの活性化を介して抑制性サイトカインIL-10の発現を促すという。 肥満細胞におけるStimの役割はアレルギー反応を増強する分子として、過去に同じ研究グループから報告されていた。今回の論文はStimがIL-10を産生する制御性B細胞の機能においても重要であり、多発性硬化症のモデルマウスにおいて、Stimを欠損させることで悪化することを示した。免疫細胞におけるカルシウム動態の重要性を示した研究である。Stimを制御性B細胞特異的に活性化することは可能かどうか。肥満細胞の活性化を抑制するためにStimを抑制させる薬は副作用として制御性B細胞の機能を抑制するのだろうか。 2011年6 月29日 (水) チロシンホスファターゼεと肥満 Cell Metabolism 2011年5月号から。4年生のYukiちゃん。 レプチンは視床下部に作用して、体重抑制に働く分子であり、末梢の白色脂肪細胞から産生されるという。視床下部に存在するレプチン受容体にはJAK2が恒常的に会合しており、下流にシグナルを伝えるが、JAK2は細胞膜貫通型のチロシンホスファターゼεをリン酸化し、 JAK2の自己リン酸化を抑制することにより、過剰なレプチンシグナルの伝達を正常レベルに調節しているという。すなわち、レプチンシグナルのネガティブフィードバック機構においてチロシンホスファターゼεが重要な役割をしており、この分子がなくなるとレプチンシグナルが過剰になり、体重増加が抑制されるという。 レプチンについて興味があるのは、血液脳関門をどう通過していくのかである。内皮細胞に存在するレプチン受容体がそのトランスポートに関与するという報告がある。肥満のヒトではこのトランスポートが機能せず、視床下部におけるレプチン濃度が低下し、体重増加に繋がっているのではという報告もある。今回の論文の成果は視床下部だけではなく、血液脳関門の内皮細胞のレプチン受容体でも起こっているのではないだろうか. 2011年6 月28日 (火) 肝臓における脂質代謝

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です