研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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54 軽度の感染時の自然免疫機構を明らかにしたものであり、重篤な感染時は骨髄由来のサイトカインというより感染末梢組織由来の大量のサイトカインにより、単球を増やしているのかもしれない。骨髄のMCP1産生細胞にあらゆるTLRを発現していることから、骨髄が初期感染に対する生体防御にいかに重要かというクリアに示している。 2011年5 月24日 (火) LIGHTな気道リモデリング 本日の朝のトピックは、Nature Medicine 5月号から喘息の重篤化に関わる気道リモデリングにLIGHT(TNFスーパーファミリーに属するサイトカインの一種)が主に関与していることをマウスで証明したという論文。発表者は創薬生命薬科学科4年のYukiちゃん。気道モデリングは慢性炎症により気道壁が肥厚し、不可逆的な狭窄状態を引き起こすことを指し、喘息の重篤化と密接に関係し、吸入ステロイド等は有効ではないことから新たな創薬ターゲットが求められてきている。LIGHTは活性化されたリンパ球上に発現し、それを受容する受容体は上皮細胞やストローマ細胞に発現しているという。この論文では2種類の喘息モデルにおいてノックアウトマウス等によりLIGHTが気道リモデリングの病態を引き起こし、そのメカニズムには、肺胞マクロファージからのTGF-βと好酸球からのIL-13の産生増加によることを示している。肺胞マクロファージと好酸球における受容体が異なることから、LIGHT(リガンド)のブロックする遊離型の受容体を用いれば、症状が改善できるが、他のリンホトキシンの作用をブロックするため、現時点では、LIGHTのモノクローナル抗体しかないか。論文の実験プロトコールからすると、予防的というより、治療的(増悪化)に効くことが予想される。ただし、腹腔内への頻回投与の効果である。過去の臨床報告において、LIGHTの病態との関与が示唆されており、今後、この論文発表を端緒に、臨床における裏付けデータがさらに増えてくることを期待したい. 2011年5 月19日 (木) 加齢黄斑変性症の予防、進行抑制に光か!? 加齢黄斑変性症は、加齢に伴い、網膜の黄斑部が変性することで視力が低下する疾患である。日本の推定患者数は40万人を超え、米国では失明原因の1位という。原因には加齢、喫煙、遺伝、酸化ストレスが言われているが詳細は不明である。加齢黄斑変性症のうち、網膜色素上皮細胞が萎縮するというタイプが90%を占めるという。今朝の話題は、Nature 3月号にて紹介された、萎縮型加齢黄斑変性症の機序を解明したという話である。学部4年のKoyama君が紹介してくれた。現在、熊本のエピジェネティクス学会に参加している関ラボのメンバーも朝ゼミに参加した。本日の主人公分子は、Dicer1とAlu RNAである。Dicer1はmiRNAやsiRNAの産生に関与する。Dicer1のノックアウトは胎生致死であり、発生に関わる多くのmiRNAの生成を抑えた結果であることは既に報告されていたが、細胞の運命が決定された後に網膜色素上皮細胞でDicer1を特異的にノックアウトすると、Dicer1はAlu RNAを分解できず、Alu RNAの蓄積を促し、網膜色素上皮細胞に細胞死を引き起こすという。また、Alu RNAの過剰発現が実際に萎縮型加齢黄斑変性症を引き起こすという。治療的にも、網膜色素上皮細胞において二本鎖Alu RNAを抑制することで萎縮型加齢黄斑変性症が改善するという知見も得られている。予防的な目的で医薬品を開発する場合、アンチセンス療法がどこまで展開可能なのだろうか。今後、臨床応用に関する報告が出てくるかが楽しみである.関君の方法に関する質問に学生が戸惑っていたが、自分で実際に実験をする、あるいはこれを応用するという感覚で論文を読まなければならない。方法のパートこそ、きちっと読み込むことで、そのデータの本質がわかる。論文の流れについてプレゼンするレベルから、論文の裏(本質)を読み取る、次のレベルへとステップアップすることが大切である。関ラボは来年2名がドクター進学希望という。良い雰囲気のラボが構築されてきている。OBの活躍は後輩達の良い刺激になる。 2011年5 月17日 (火) 脳腫瘍におけるp53量の新たな調節機構 ある種の脳腫瘍でp53に変異が稀であるのに、p53が不活性化されているという報告があった。p53の分解にはHDM2(マウスではMDM2)が関与していることは有名な話である.今回、RUI-chanが紹介したNature Med.3月号の論文は面白い。HDM2だけでは、p53のポリユビキチン化は起こらなかったのだが、URE4Bの共存により、ポリユビキチン化を促進し、p53の分解を起こすという.いくつかの種類の脳腫瘍組織において、URE4Bの高発現とp53の低発現という逆相関が認められている。脳腫瘍の遺伝子治療法として、p53を補うという戦略があったが、URE4Bの高発現であると導入されたp53の効果が減弱してしまうのかもしれない。HDM2の発現があまり変わらないのであれば、p53遺伝子治療の際に、URE4BのsiRNAを同時に入れたらどうだろうか。p53の効果が持続し、有効性が高まるのでは。あるいは、URE4B siRNA単独でも面白い。

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