研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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55 今日の正午が研究費申請の締め切りで、先週からずっと、かつ一日中、申請書の構想ばかり渦巻いていた.そのせいではないが、2チームを出したソフトボール大会は両チームとも1回戦負けでした。ソフトボールでの大きな収穫は、学部3年生のOhmachi君が本格派のピッチャーであることがわかったこと。メンバーが少し揃えば、近い将来、優勝カップでの美酒を再度味わえる可能性が高い。楽しみである。 今日の午後から関君のラボメンバーが熊本にやってくる.一緒にジョイントセミナーをし、その後、交流会を持つ。担任会も一緒に兼ねてやります。 2011年4 月27日 (水) 多発性硬化症に対する新たな治療法に Nature Med.2011年4月号の論文。 神経線維のミエリンの障害による神経変性疾患である難病。欧米に多く、日本では人口10万人には8-9人という。平均の発症年齢は27歳。自己免疫性疾患ということで、現在の治療法としては、ステロイドパルスや血漿交換法、IFN-β療法、免疫抑制薬があるが、根本的治療法は確立されていない。今回の論文で注目した分子は、RGMaという神経細胞表面だけでなく骨髄由来樹状細胞にも発現している分子で、これに対する中和抗体が有用であることを証明した内容である。中和抗体が末梢のRGMaに作用して効いているのか、中枢で作用しているのかが不明な点で、色々と議論されるのであろうが、どこで作用するにしろ、副作用なく、最終的な表現型が改善されていれば良いのではと思う。この知見が将来、患者を救うことに貢献できることを心より願いたい。現在、日本では、ONO-4641というS1P受容体に作用する化合物がPhase II試験中であるが、その有用性が現在用いられている療法と比較してどうだろうか興味が持たれる。 5/10(火) 本ブログを見てコメントをくれている、OBのFukuda氏から関連情報の提供がありました。 「多発性硬化症の治療はここ数年で劇的に変わる可能性がありますね。 SP1受容体に作用する薬剤ではノバルティスのGilenya (FTY720)が世界で最初に承認されています。 http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2010/1445917.shtml http://www.novartis.com/newsroom/media-releases/en/2011/1504993.shtml この化合物のオリジネータは吉富製薬で、冬虫夏草からの抽出物由来だそうです。 国内ではノバルティスと田辺三菱製薬と共同で申請中のようです。 http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/development/com0450.html 今までの治療法に比べて圧倒的に有効性安全性に優れ、ブロックバスター(全世界売上1,000億円以上)になると見込まれています。」 2011年4 月26日 (火) 腸内細菌と心血管疾患発症リスク Natureの2011年4月号から。重要な報告。 コレステロールやトリグリセリドと心血管疾患発症との関連に関する研究は盛んに行われてきた。この論文は、食事由来のリン脂質の代謝には、腸内細菌が関わり、心血管疾患発症リスクと密接に関係していることを明らかにした。アテローム性動脈硬化症モデルマウスに高リン脂質食を与えると症状が悪化し、その影響は抗生物質処理や無菌環境で飼育すると見られないことから、腸内細菌が関わっているという。3年間で集めた心血管イベントで死亡した患者(1000名以上)由来の血液を分析した結果、Choline, TMAO (trimethylamine N-oxide), Betaineという代謝産物が高濃度に存在し、心血管リスクと高度の相関が認められた。Phosphatidylcholine (PC)がCholineに分解され、CholineがTMAになり、TMAが肝臓でTMAOに代謝され、TMAOが動脈硬化を促進するという流れ。心血管リスクを減らすために、患者に予防的に抗生物質を長期投与し続けることは問題があるだろう。ヤクルトなどの乳酸菌を含む食品を取ると、TMAO, TMA産生抑制が起こるという論文も報告されていることから、TMAOが高いヒトに対しては、腸内細菌叢を意識した食生活を取ることを推奨するのが良いのかもしれない。この論文の大きな意義は、バイオマーカーとしてTMAOに注目し、血液中濃度が高くなってきている人々に食事注意報を流すという、心血管疾患に対する新たな予防法を提起できたことであろう。TMAOに変換する酵素を阻害する薬も考えられるが、その結果としてamineが増え、体臭が魚臭くなるのではという懸念もある。 2011年4 月21日 (木)

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