研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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47 M2のFukuda君のセミナー(Nature Med. 8月号)。巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は腎糸球体内での巣状化、局所性の糸球体硬化を示し、家族性と特発性がある。高頻度で腎不全に陥るという。原因は糸球体上皮細胞ポドサイトの足場構造の破綻である。腎移植をした場合も再発することが多く、血漿交換により治療ができることから循環血に含まれる因子が重要であろうとされてきた。本論文で注目されている分子は、urokinase-type plasminogen activator receptor (uPAR)の遊離型であるsuPARである。このsuPARが腎移植後再発したFSGS患者の血液中で高いこと、血漿交換治療により低下すること、uPARをノックアウトした腎臓を持つマウスに対してもsuPARによる腎障害が発生すること、suPARの抗体やsuPARの結合部位であるβインテグリンの阻害薬で腎障害が改善することが明らかになった。このことは、suPARを定量することにより,腎移植後の予後の診断が可能になり、また、suPAR抗体療法も可能であるのかもしれない。このsuPARの産生細胞として、炎症細胞が考えられているため産生抑制薬も今後期待されるだろう。 2011年9 月30日 (金) チアゾリジン系抗糖尿病薬の新たな作用点 2011年のCell Metabolism 7月号に、掲載された内容は、チアゾリジン系抗糖尿病薬が、皮下脂肪に作用して、adiponectinの産生を増加させ、増えたadiponectinが血管内皮細胞に作用し、NO産生増加やROS産生抑制を介して,血管病変を抑制するというもの。学部3年のChosanのプレゼン. この効果には、内臓脂肪ではなく、皮下脂肪が重要であることがポイント。論文のデータの信憑性に関する議論はあるにせよ、やせたタイプの糖尿病患者には、インスリン抵抗性の改善作用は期待できても、血管病変抑制作用を期待できないといえる。臨床成績との関連性について知りたい。 ところで「Obesity paradox in patients with hypertension and coronary artery disease. Am J Med 2007 120:863-70. Uretsky S, Messerli FH, Bangalore S et al.」の論文発表をきっかけに、「Obesity Paradox」という現象が注目されている。BMIが増えると合併症・死亡率が減るという報告であり、その後、COPDでも同様な臨床データが得られているという。小太りの方が長生きであり、皮下脂肪も無く、スタイルが良い美女は短命かも(美人薄命)と考えると興味深い。皮下脂肪から産生されるadiponectinがさまざまな血管性合併症予防に関わっていると考えると納得がいく。私の健康診断で異常マークが付くのはいつもBMI。でも、他のパラメーターは正常だし、やせていた若い頃より、風邪を引いたり、熱を出したりしなくなっている。バイオメトロノームの基礎、臨床試験のデータで体重には全く影響を与えず、内臓脂肪を減らし、炎症性パラメーターは抑制しているという知見(血液中のadiponectinは増加しつつ)は大変リーズナブルではないだろうか。逆に、筋肉を収縮させるだけの健康機器を用いて(効果の信憑性は別にして)、皮下脂肪が無くなりスタイルが良くなるという話は寿命的には?ではないだろうか。ということで、「小太り健康法」というのを推奨したらどうだろうか。そう思ってGoogleで「小太り健康」でサーチしたら、いろいろとヒットしてきた。今日の話題は、最近、食欲が旺盛で、少し体重が増えてきた自分を慰める話。私はまだまだ小太りに達していないからうまいものを食べても良いとーーー。 2011年9 月26日 (月) がんの浸潤と転移とカベオリン Cellの7月号から、学部3年のマッチコーヘイの2度目のプレゼン。よく読みこなしていた。できても中々、浸潤転移しにくい癌がある。この癌の周りには繊維芽細胞が籠のように取り囲んでいるという。一方、この繊維芽細胞が高速道路のごとく縦に並んだ形態をとると、癌の浸潤転移が起こってしまうという。このような微小環境の違いが癌の悪性度に大きく影響するという.この繊維芽細胞の形態変化に繊維芽細胞に発現するカベオリン1が大きく関与している事が証明された。この論文において、カベオリン1のノックアウトマウスでは、癌の転移能が低下しているという。ヒトのガン組織切片における繊維芽細胞上のカベオリン1の発現量とサバイバルがきれいに相関している。診断マーカーとしても有用であるが、カベオリン1のノックアウトは他の表現型が出ない(副作用がない)ことから治療薬のターゲットとしても面白いだろう。 2011年9 月26日 (月) 新たなCF治療戦略に!? Cellの9月号からジュリアが紹介。学部3年から今までで9回のゼミを担当した事になる.まだ、M1なので、修士修了時にはーーー。cystic fibrosisという遺伝性疾患がある。この原因遺伝子はCFTRであるが、多くの患者で見られる変異CFTRは小胞体に滞留したまま、分解されて行くため、細胞膜に出現し、機能を発揮する機会さえ奪われている。この変異CFTRをうまく細胞膜に輸送できれば,治療は可能と長年言われ、さまざまな検討がなされてきたが、まだまだ成功していない。今

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