研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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52 また、タンパク(ペプチド)抗原だけではうまく免疫がつかない感染症でも、アジュバントを用いると免役できる可能性を秘めています。 経験的にAlumはTh2タイプの免疫応答を高める傾向が強く(特に動物で)、新しいワクチンの開発では常にアナフィラキシーのリスクを伴います。 最近の研究ではTLRのように機作のハッキリしたもの以外にもリポソームやナノ粒子を用いたアジュバント研究でIgEの産生を抑制したりCTL活性を効率的に誘導したりすることが可能となってきており、その有用性に期待が掛かっています。」 2011年6 月21日 (火) アディポネクチンの新たな作用メカ part2 2011年 Cell Metabolism 4月号から。Miki chan. アディポネクチンがインシュリン感受性を高めるメカニズムとして、マクロファージ由来のIL-6が肝臓における IRS-2発現上昇が関与していることを明らかにした論文。従来,IRS-2のノックアウトで糖尿病を発症しうることは知られていた。また、アディポネクチンの受容体 AdipoR1,R2のダブルノックアウトでも糖尿病が起こることは知られていた。さらに、アディポネクチンは内臓脂肪型肥満において発現が低下していることも分かっていた.本報告では、アディポネクチンの効果に、今まで糖尿病悪化因子として注目されていた炎症性サイトカインIL-6の一過性の上昇がポジティブに関与していることなど、興味深い研究成果が紹介されている。面白いのは、IL-6の慢性的な発現上昇が糖尿病の悪化に、一過性の上昇は糖尿病の改善に関与するということ。今後は、マクロファージ上に存在すると思われる、アディポネクチンの新たな受容体とは何だろうか。TLRか。 2011年の4月12日の朝セミナーの話題も「アディポネクチンの新たな作用メカ」 その時の論文は、「肝臓においては、炎症性サイトカインにより、セラミドが増え、Aktの活性化が抑制され、インスリン抵抗性が亢進しているが、アディポネクチンが受容体を介してセラミダーゼを活性化することにより、セラミドを減少させるとともに、セラミドの代謝産物であるスフィンゴシンがPDK1を介してAktを活性化して、インスリン抵抗性を改善する。」という内容。 さらに、「セラミドはTLR4を介したインシュリン抵抗性を引き起こすこともわかってきている。アディポネクチンの抗炎症作用はセラミドの減少によるのではないかととも考えられている。」 本日の論文の内容とこの内容を関連づけて考えると、様々なステップで効果的に作用する内因性のアディポネクチン量を如何に維持するかが代謝性疾患の予防に重要であることを示している。大学附属病院と日赤健康管理センターで実施した、バイオメトロノームを用いたメタボ対象者(N=40)に対するクロスオーバー臨床試験で、週4回、1回1時間の処置を3ヶ月継続することで、内臓脂肪の減少とともに、血液中のアディポネクチンが上昇、慢性的に産生されている血液中の炎症性サイトカインの減少を引き起こし、全身の症状を有意に改善するというデータは、これらのメカニズムの報告と絡めると納得いく。 2011年6 月15日 (水) 気道上皮細胞の形つくり Cell Stem Cell 6月号から。Jyurianこと、Chizurunのプレゼン。 2009年の臨床系論文において、COPDあるいは(及び)喫煙者の気道上皮細胞のNotchシグナル系が低下し、粘液細胞等への分化誘導が示唆されていた。私が20代後半からチャレンジしたプロジェクトは、ウサギなどの気管から基底細胞を単離する方法を確立し、様々な条件で培養することにより、粘液産生細胞や繊毛細胞に分化できないかという研究であった。顕微鏡を覗きながら描いていた夢は、粘液細胞への分化を抑制し、繊毛細胞への分化を促進することができれば、粘液過剰で悩む呼吸器疾患患者を救う、効果的な去痰薬ができるのではというものであった。ウサギの気管から基底細胞は沢山取れたが、細胞の継代培養ができず、繊毛細胞は単離後、早い段階で死滅していくことがわかり、ウサギやその他の動物を使うのは断念し、最終的には、基底細胞の継代が可能であったハムスターを使用した。ハムスター気道上皮細胞を用いて、コラーゲンゲル上で培養することにより、粘液細胞へと分化が誘導され、プラスチックプレート上で培養すると漿液細胞用の性質を持つ基底細胞として維持ができた。分化誘導された粘液細胞を用いて、薬理学的な研究をし、いくつの論文を発表することができた。UCSFに留学したのも、気道細胞の分化に興味を持ち、分子生物学の技術を駆使していたCarol Basbaumのラボがあ

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