研究教育業績集 甲斐広文先生 教員生活25周年および教授就任10周年記念
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56 乳癌の薬物治療に光明か? Nature Med. 2011年4月号から。Ryo-chinの紹介。 日本人女性の約30人に1人が生涯のうちに罹患するという乳癌。治療薬としてはヒト化モノクローナル抗体であるトラスツマブ(ハーセプチン)が悪性度が高いERBP2陽性乳癌に対して有効であることが知られている。しかし、がん細胞が耐性を獲得し、約1年で効果が失われてしまう場合があるという。現在まで、その耐性のメカニズムには大きく2つあることが明らかにされてきた。今回の論文は、SRCというチロシンリン酸化酵素が耐性に関わる共通の重要な因子であることを明らかにし、その阻害薬を併用投与するとトラスツマブ耐性のERBP2陽性乳癌がトラスツマブに対して感受性を示すようになることがわかった。Fig.6cのin vivoデータはかなりインパクトがある。SRC阻害薬であるsaracatinibはPhase IIの臨床試験中であるという。併用による臨床試験の結果が大変楽しみである。 2011年4 月20日 (水) 血管内皮細胞のNO産生とインスリン抵抗性との関係 Cell Metabolismの2011年3月号から。M2のMikity. 血管内皮細胞におけるインスリンシグナルの低下が骨格筋におけるインスリンの糖取り込み作用の減弱につながる。そのメカニズムは以下の通り。健常者は、食後に増加した血液中のインスリンが血管内皮細胞のインスリン受容体に作用し、IRS2-Aktを介して、eNOSを活性化し、血管内皮細胞からのNO産生が増える。その結果、毛細血管の透過性が増加し、骨格筋細胞に血液中のインスリンが移行しやすくなる。一方、糖尿病状態では、血管内のIRS2発現が低下しており、上記の現象が起こらず、骨格筋におけるインスリンによる糖取り込みが起こりにくくなる。正常動物を用いて血管内皮細胞特異的にIRS2をノックアウトすると、骨格筋において糖取り込みが抑制されていた。また、糖尿病状態の動物に、プロスタサイクリン誘導体を投与して、血管内皮細胞におけるNO発現を異なるメカニズムで増加させると、骨格筋におけるインスリンによる糖取り込みが改善したという。ただ、単純に骨格筋へのインスリン移行を促進しても、骨格筋におけるインスリンシグナルが炎症性サイトカインによって低下していたら効果は期待できないのではと思ったが、やはりプロスタサイクリン誘導体の臨床試験結果は?らしい。タイトルがあくまでも「Impaired insulin signaling in endothelial cells reduces insulin-induced glucose uptake by skeletal muscle」となっており、全身症状改善とまでは言っていない。単純な血管拡張であれば、血液中の炎症性サイトカイン等の移行も促進され、骨格筋細胞におけるインスリンの作用も抑制され得るのもその理由か。ただ、温熱療法で骨格筋近傍の毛細血管を拡張するとともに、骨格筋のHsp72発現を上げることで、骨格筋細胞におけるインスリン抵抗性を改善することで有効性を示し、さらに、最適化された微弱電流の効果により、インスリンシグナルをさらに増強できるため、温熱と最適化された微弱電流の併用(バイオメトロノーム、Bio Metronome)が、メタボや2型糖尿病患者に対してかなり有効であることのメカニズムのひとつとして考えてよいだろう。さらには、最適化された微弱電流には、血液中の炎症性サイトカインを抑制する作用もあることも全身症状の改善に大きく貢献しているのだろう。かなりわかってきた。 2011年4 月19日 (火) ファンコニ貧血と「春のコンサート」by 熊薬アンサンブル部 再生不良性貧血のうち、先天性の疾患であるファンコニ貧血は35万人に1人という。平均寿命は30歳であるが、自然緩解例もあるという。Journal of Clinical Investigationの2011年1月号に掲載された論文はこの自然緩解例のファンコニ貧血の発症メカニズムと白血病発症に関するトピック。M2のTomyが難しい内容をうまく紹介してくれた.ファンコニ貧血の原因遺伝子はDNA修復に関わる遺伝子であり,これに変異があると細胞周期のG2チェックポイントでのチェック機能が低下しているという。自然緩解しない患者の末梢血リンパ球のATR-CHK1経路を阻害すると、自然緩解する患者のものと同じになることから、この経路が重要であることは間違いないという。ファンコニ貧血は自然緩解しても、いずれは白血病になるが、寿命は延びるため、患者にとっては、論文タイトルにあった「clinical benefit」なのだろう。 2011年4 月14日 (木) 肥満時の脂肪組織におけるマクロファージ活性化機構 3日連続、Nature Med.のセミナー。Ihori-chan担当。肥満、糖尿病において慢性炎症が起こっている。その慢性炎症は脂肪組織におけるマクロファージの活性化と関係している。マクロファージには、M1型マクロファージとM2型マクロファージがある。そのうち、M1型マクロファージがIL-1βやTNFαを産生し、インスリン抵抗性に関与している。そのマクロファー

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